「ご職業は何ですか」
初対面の場で、私が一瞬詰まる質問です。
アフィリエイトにFX、キャンピングカー事業に清掃業。どれも本業で、即答できないからです。
この状態を整理してくれるのが、副業と複業の違いです。
答えを先に置いておくと、副業と複業を分けるのは、収入の大きさではなく、仕事のあいだに「主従関係」があるかどうかです。
本業がメインで他はサブ、と位置づけるのが副業。どの仕事にもメインとサブの区別をつけないのが複業です。
ただ、複数の事業で暮らしてきた実感から言うと、この2つは「どちらを選ぶか」の二択ではありません。
副業として始めたものを、複業に育てていく。
時間の順番でつながっている言葉です。
この記事では、副業・複業・兼業・パラレルキャリアという紛らわしい4語の違いを整理したうえで、国が「副業解禁」に舵を切った経緯と、「育てる」という発想がこれからの時代に必要になる理由をお伝えします。

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「ご職業は?」に詰まる働き方──複業の実態
まず、複業とはどんな状態なのか。教科書の定義より先に、実物をお見せします。
いまの私の仕事は、ざっと並べるとこうなります。収益の主力であるGoogleリスティングアフィリエイト。自分でつくったコンテンツの販売。FXの運用。キャンピングカーレンタル会社の下請け業務。そして清掃業。
デスクの上で完結する仕事と、汗をかく現場仕事が、1週間のなかに同居しています。
余談ですが、30代半ばの頃の私は、職業を聞かれるのが少し苦手でした。プロボクサー崩れのフリーターです、と答えるときの、声が細くなるあの感じは、いまも覚えています。
いまも即答できないのは同じなのに、理由が逆になりました。名乗れる仕事がないからではなく、1つに絞れないからです。
この「どれが本業か決めていない」状態が、複業と呼ばれる働き方の実態です。
ただし、最初からこうだったわけではありません。この点は、この記事を読み進めていくにつれて理解できていきますので、ぜひ覚えておいてください。
副業と複業の違い──分かれ目は「主従関係」の有無
では、言葉を整理します。副業も複業も、読み方は同じ「ふくぎょう」。意味は、はっきり違います。
- 副業──本業が別にあり、その「サブ」として行う仕事。空いた時間で取り組み、目的は収入の補填が中心。
- 複業──複数の仕事のすべてを「本業」と捉える働き方。メインとサブの区別を置かない。パラレルワークとも呼ばれる。
- 兼業──複数の仕事を掛け持ちする状態を広く指す言葉。主従の有無は問わない。
- パラレルキャリア──報酬の有無を問わず、本業と並行して「もう一つの世界」を持つこと。非営利活動や地域活動も含む。
パラレルキャリアの出どころは、経営学者のP.F.ドラッカーです。1999年の著書で、人が組織より長生きする時代には「もう一つの世界」を持つ必要があると説きました。
参考:P.F.ドラッカー『明日を支配するもの』(ダイヤモンド社、1999年)/https://drucker.diamond.co.jp/works/detail/1.html
整理すると、兼業という大きな枠のなかに、主従をつける副業と、主従をつけない複業がある。そういう関係です。
ここで大事なのは、これが単なる言葉の分類ではないことです。
ある仕事を「サブ」と呼んだ瞬間、その仕事への向き合い方が決まってしまう。
疲れていたら休む対象、本業が忙しくなったら削る対象になる。呼び方の違いは、覚悟の違いなのです。
国が「副業禁止」の手本を書き換えた日
複業という言葉が広がってきた背景には、はっきりした転換点があります。
2018年1月、厚生労働省は企業の就業規則の雛形である「モデル就業規則」を改定しました。
それまで労働者の遵守事項にあった「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定を削除。代わりに、勤務時間外は他社の業務に従事できるとする副業・兼業の規定を新設したのです。
参考:厚生労働省「副業・兼業」/https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192188.html
会社に勤めながら他の仕事を持つことは、長いあいだ「原則禁止、例外的に許可」の世界でした。それが、国の示す手本のうえでは「原則自由、届出制」にひっくり返った。
理由は、シンプルだと思います。
一社に人生の全部を預けるモデルが、預かる側の体力の面で維持できなくなったからです。定年まで雇用を保証する代わりに忠誠を求める、という取引の前提が崩れた以上、収入の入口を1つに縛る根拠も薄れます。
この転換の背景には、人生100年時代に「教育 → 仕事 → 引退」の3ステージが成り立たなくなるという、より大きな構造変化があります。複業(ポートフォリオ・ワーカー)を新しい標準として位置づけたライフシフトの考え方を、こちらで解説しています。
もちろん雇われて働くこと自体は、いまも合理的な選択です。ただ、雇われ「だけ」で設計することの構造的な限界を、別の記事で詳しく書いています。
複業は「目指す」ものではなく「育てる」もの
ここからが、この記事でいちばん言いたいことです。
複業という働き方に憧れて、「明日から自分も複業です」と宣言する。これは、うまくいきません。
複業は目指してなるものではなく、副業が育った結果としてなっているものだからです。
私の場合、もがき苦しんで試行錯誤した末にようやく軌道に乗り始めたのは、2014年。Google AdSenseを使ったアフィリエイトでした。数年間は、ほぼそれだけです。
ただ、この一本は、手を動かし続けなければ収入も止まる、労働収益型のビジネスモデルでした。そこで軌道に乗っていたやり方をいったん壊し、仕組みで回るビジネスモデルへ作り替える転換に、さらに数年を費やしています。
次のわらじが増え始めたのは、そうして手が空いてからです。コンテンツ販売、コンサルティング、FX、キャンピングカー事業、清掃業、そして現在最も注力している、AdSense時代とは手法の違うGoogleリスティングアフィリエイト。1つずつ、順番に増えています。
つまり、一本を「育てる」とは、収益を伸ばすことだけではありません。自分の手が離れても回る形に組み替えるところまで含めての、「育てる」です。
逆に言うと、最初から3つも4つも並べていたら、どれも育たなかったと思います。1つの仕事が形になるまでには、集中的に手をかける時期がどうしても必要だからです。
複数の収入源をどの順番で立ち上げ、どう組み合わせるか。この設計の実務は、こちらの記事に譲ります。
そのうえで、育てる過程で効いてくるのが、先ほどの「呼び方」です。
サブのつもりで扱った仕事は、サブのままで終わります。
手をかけない、学ばない、疲れたら後回しにする。そういう扱いをした仕事が、あるとき化けて柱になってくれることは、まずありません。
だから私は、こう考えています。
形のうえでは副業から始めていい。ただし、「いつか本業の一角に昇格させる候補」として扱えないものは、最初からやらない。
育てる気のないわらじを、数だけ増やさないことです。
収益の主従と、人格の主従は別の話
正直に言えば、私の働き方は、教科書どおりの複業ではありません。
複業の定義は「どの仕事も対等」ですが、収益で見れば、私の主力は明確にデジタル側です。清掃業やキャンピングカー事業が、金額でアフィリエイトと並んでいるわけではない。
それでも私は、どの仕事も「サブ」とは呼びません。
収益の主従と、人格の主従は、別の話だからです。
金額が小さくても、清掃の現場には現場の段取りと誇りがあり、手を抜けば信用はそこで終わります。「サブだから」という言い訳を自分に許した瞬間、その仕事は腐り始めます。
そして、ここに複業のもうひとつの配当があります。収入の分散よりも大きいかもしれない配当です。
どれか1つの仕事に、自分の人格を全部預けなくて済む。
仮に主力の事業が明日消えても、「自分が何者か」の答えまでは消えません。
私はこの答えを、プロボクサー引退の日に、肩書きと一緒に一度見失いました。遅れてきた学習として、改めて突きつけられたのです。
この発想を仕事の外まで広げて、家族や健康や遊びも含めた人生全体の配分として設計する考え方を、こちらの記事にまとめました。
わらじは、増やすだけでなく脱ぐこともある
複業のデメリットにも、触れておきます。仕事の数だけ、管理のコストが増えることです。
時間は細切れになり、確定申告の帳簿は事業の数だけ複雑になり、頭の切り替えにも体力を使います。これを甘く見て全部を持ち続けると、どれも中途半端な「器用貧乏」に落ちていきます。
だから複業には、増やす判断と同じくらい、畳む判断が必要です。
私自身、コンサルティングの新規募集を止めています。大きな収益の柱にはなっていましたが、人に教える立場より、自分の手を動かすプレイヤーでいるほうが性に合っていると、わらじを履き比べてわかったからです。
複業とは、わらじを増やし続けることではありません。履くものと脱ぐものを、自分の意思で入れ替え続けることです。数はその結果にすぎません。
会社員は、どちらから始めればいいのか
では、いま会社勤めをしている方は、どうするか。答えは1行で書けます。
形は副業から。発想は複業で。
いきなり会社を辞めて複数の仕事を並べるのは、育っていない苗を5本植えるようなものです。給与という土台があるうちに、1本目を副業として小さく始めるのが、順番として堅い。
ただし、始める前に確認すべきことがあります。自社の就業規則です。モデル就業規則は届出制に変わりましたが、実際の規定は会社ごとに違います。
禁止規定が残る会社での立ち回りと、住民税など「バレる経路」の実務は、こちらで解説しています。
そして始めるときは、「お小遣い稼ぎのサブ」としてではなく、5年後の本業候補を1本育てるつもりで。
時間・家族・お金という土台の整え方は、この記事が入口になります。
候補を本業と呼べる日は、宣言ではなく結果として来ます。
育てた仕事が、ある日、名刺の1行目を書き換えてくれる。順番はそれでいいのです。
まとめ|わらじの数は、あとから増える
副業と複業の違い──要点の整理
- 分かれ目は主従関係──本業のサブが副業、どれも本業と捉えるのが複業。読みは同じでも覚悟が違う。
- 時代は「原則自由」へ──2018年に国のモデル就業規則から副業禁止規定が消え、届出制に転換した。
- 複業は育てた結果──最初から並べず、副業の一本目を集中して育て、手が離れた分だけ増やす。
- サブと呼んだ仕事は育たない──形は副業でも、発想は「将来の本業候補」として扱う。
二足のわらじ、という言葉には、どこか腰の定まらない響きがあります。
けれど、これからの時代にむしろ危ういのは、一足のわらじがすり切れたら裸足になる設計のほうだと、私は思います。
わらじの数は、あとから増えます。まずは1足目の副業を、サブ扱いせずに編み始めることです。
私自身が就職という選択肢を捨て、周囲にあきれられながら1足目を編み、いまの複数のわらじにたどり着くまでの顛末は、著書(Amazon kindle ランキング 5冠を達成した電子書籍)『あ、常識とかいいんで、とりあえず自由ください。』に綴っています。無料ですので、働き方を考え直す材料にどうぞ。
また、私のわらじの1つであり、収益の主力であり続けているのが、Googleリスティングアフィリエイトです。少ない作業時間で仕組みを積み上げるこの手法の全体像は、『Googleリスティングアフィリエイト大全』として無料で公開しています。本業候補の1本目を探している方は、選択肢に加えてみてください。

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