人生設計は必要ないのか|何十年分の計画表より、一つの判断でいい

完成図は不在で判断はあるイメージ
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人生設計は必要ない、というのが私の答えです。

ただし、何も考えずに生きていい、という意味ではありません。いらないのは、お金の出入りを何十年分も埋めた「計画表」のほうです。

表がなくても、今日の選択はできます。必要なのは、10年後の目的地ではなく、「これはやらない」と言える判断が一つあることです。

私は大学4年生のとき、就職活動をせずにプロボクサーになりました。その先何十年分の計画表は、一枚も持っていませんでした。

この記事では、人生設計が「必要ない」と言えるのはどこまでか、そして表の代わりに何を持てばいいのかを、順に整理します。

この記事は私が書きました
☞ 山下 哲郎(当サイト管理人&編集長)

計画表はなかった。判断だけはあった

大学4年生、周りが就職活動を始めた時期に、私は就活をしませんでした。卒業後はプロボクサーとして生きる、と決めていたからです。

手元に、何十年分の年収の見通しも、家を買う時期の計画もありませんでした。あったのは、「就職はしない」という判断が一つだけです。

周囲からは、何も考えていない人間に見えていたと思います。何を考えてレールを外れたのかは、別の記事に書きました。

ここで言いたいのは一点だけです。計画表はなかった。でも判断はあった。

あれから職業は、ボクサー、フリーター、ネット起業と何度も変わりました。どの転機でも、先に計画表を仕上げてから動いたことは一度もありません。

だから私は、人生設計を持っていない人を、考えていない人だとは思いません。

計画表がないことと、判断がないことは、別の話です。

もしあのとき、何も決めないまま周りと同じように就職していたら。想像すると、いまも背中が少し冷えます。

「人生設計」で検索すると出てくる、あの表の正体

「人生設計」と検索すると、銀行や保険会社のページが並びます。どのページも、ほぼ同じ表を勧めてきます。

横に年齢、縦に収入と支出。30歳で結婚、32歳で第一子、35歳で住宅購入、60歳で退職。そんな出来事を並べ、何歳の時点で貯金がいくらになるかを計算する表です。

この表には、二つの前提が隠れています。

前提① 出来事のほうが、先に決まっている

結婚する、家を買う、定年まで同じ会社で働く。表に数字を入れる前に、どんな出来事が起きるかは、もう決まっています。

まだ結婚するかも、家を買うかも決めていない人が、この表から入るとどうなるか。他人の人生の見本を、自分の予定として書き写すことになります。

前提② いまの自分の好みが、ずっと変わらない

もう一つの前提は、「表を埋めている今日の自分の好みが、この先も変わらない」というものです。これは研究で、錯覚だと分かっています。

ハーバード大学のクイドバックらは2013年、18歳から68歳までの1万9,000人超を調べました。どの年代の人も、「過去10年で自分は大きく変わった」と答えました。ところが同じ人が、「これから10年はあまり変わらない」と予測したのです。

研究者はこれを「歴史の終わり錯覚」と名づけました。人は何歳になっても、いまの自分を完成形だと感じる。でも10年たてば、やはり変わっている。

参考:Quoidbach, J., Gilbert, D. T., & Wilson, T. D. (2013). “The End of History Illusion” Science, 339(6115), 96-98/https://www.science.org/doi/10.1126/science.1229294

何十年分の計画表は、この錯覚の上に描かれます。自分は変わってしまうのに、表だけが、変わる前の好みのまま残る。

だから私の「必要ない」は、この表に向けた言葉です。

何十年分の計画表は、生き始めるための条件ではありません。

ただし、何も決めないと「他人の計画表」どおりになる

ここで、表と一緒に判断まで捨ててしまうと、話が変わります。

自分で何も決めなくても、人生は進みます。進む先は、世の中に用意されている見本のとおりです。就職して、家を買って、定年まで働く。

就職も、家を買うことも、それ自体は悪くありません。問題は、自分で選んだと言えないまま、見本どおりに10年が過ぎることです。計画表を作っていないのに、計画表どおりの人生になっている。

月曜の朝、同じ道を通り、同じ机に座り、同じ手順で一日が終わる。この繰り返しが悪いのではなく、それを「自分で選んだ」と言えるかどうかが分かれ目です。

無計画とは、「やらないこと」も「やること」も、どちらも言えない状態を指します。計画表がないこととは、別のものです。

「ちゃんと設計してから動こう」が、いちばん危ない

まだ表を持っていない人が、よく取る順番があります。

「ちゃんとした人生設計ができてから、転職も、引っ越しも、副業も考えよう」

この順番だと、たいてい表は完成しません。完成を待っているあいだ、今日はいちばん手近なもので埋まります。つまり、いまの働き方の続きです。

地味ですが、ここが本丸です。足りないのは情報ではありません。表がそろうまで、今日の選択を先送りしていることです。

立て方を教える記事が並ぶほど、「まだ作っていない自分」が欠けているように見えてきます。けれど、欠けてはいません。

ああいう記事が答えているのは、表の埋め方です。あなたが知りたいのは、「表がないと今日を間違えるのか」のほうでしょう。

間違えません。間違えるのは、表がないときではなく、「これはやらない」を一つも持っていないときです。

表の代わりに持つもの──「これはやらない」を一つ

では、何も持たなくていいのか。それも違います。

迷わないために持っておくのは、10年後の目的地ではありません。今日の時点で、「これはやらない」と言えるものを、一つ持つことです。

私の大学時代のそれは、「就職はしない」でした。引退してフリーターになったあとも、この判断だけは残っていました。

次に何をするかは、それから先で何度も変わりました。行き先が決まっていなくて迷った時期も、たしかにあります。

それでも、「これはやらない」が一つあるだけで、今日の選択はできました。

いまの私にも、一つあります。

「自分の時間を自分で決められない働き方には戻らない」

判断は、この一文だけです。

あなたの一つは、何でも構いません。

「転勤のある会社には戻らない」
「35年ローンは組まない」
「週末を仕事で潰す生活はしない」

どれも、立派な判断です。

副業も、住まいも、働き方も、全部を同時に決める必要はありません。やらないことが一つ決まれば、残りは空欄のままで足ります。

逆に、世の中の見本どおりに生きる、と自分で選ぶのも判断です。会社で働くこと、家を持つこと、定年まで続けること。中身を知ったうえで選ぶなら、それは他人の計画ではなく、自分の選択です。

私は見本に乗りませんでした。乗ると決めた人は、それでいい。

分かれ目は、自分で選んだかどうかだけです。

今夜やることは、計画表を開くことではありません。紙に一行、「私は、これはやらない」と書くだけです。

その一行が、今日の判断になります。10年後の目的地は、空欄のままで構いません。

行き先に自分の言葉で名前を付けたくなったら、人生のテーマの見つけ方が役に立ちます。

お金の計算が要るのは、値段のついた決断をするときだけ

正直に言うと、計算そのものを否定するつもりはありません。

家を買うか。会社を辞めて、しばらく食べていけるか。こういう値段のついた決断をするとき、数年分の収支を見積もるのは、道具として役に立ちます。

ただ、それは人生設計ではなく、その決断一つの見積もりです。見積もりが終わったら、表は閉じて構いません。寿命の終わりまで埋める必要はないんです。

将来のお金が不安なのは、表がないからとは限りません。貯金を積んでも不安が静かにならない仕組みは、別の記事で整理しています。

おわりに──空欄のまま、一つだけ決める

  • 「人生設計は必要ない」の中身は、「何十年分の計画表は要らない」です。
  • あの表は、出来事が先に決まっていて、いまの好みが変わらないという錯覚の上にあります。
  • 何も決めないでいると、世の中の見本どおりに10年が過ぎます。
  • 表の代わりに持つのは、「これはやらない」と言えるものを一つ。
  • お金の計算は、値段のついた決断をするときだけ開けば足ります。

人生設計は必要ない。

この一文は、考えることをやめていい、という意味ではありません。

世の中の見本を、考える前からなぞらなくていい。10年後は空欄のまま、今日の一つを決めていい、ということです。

すでに精密な人生設計を描き終えて、その表に疲れている人は、入口が違います。完璧な人生設計を手放し、描き直しながら生きる考え方を、別に書いてあります。

表の代わりに、小さく試しながら進む手順が欲しい場合は、人生を試作として扱うライフデザインの記事へどうぞ。

就職をやめてプロボクサーを選んだ、あの日の経緯は原点として残しています。

詳しくは、著書(Amazon kindle ランキング 5冠を達成した電子書籍)『あ、常識とかいいんで、とりあえず自由ください。』に綴っています。

下記より無料でお読みいただけます。計画表がそろうまで今日を先送りしている方に、届いてほしい一冊です。

リライフ特集

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Studio Rough Style(SRS)代表。 当サイト管理人&編集長。 1976年生まれ、熊本県出身、東京都在住。 元プロボクサーで、選手引退後に、派遣・アルバイトなど30社以上の現場を渡り歩くフリーター生活を経験後、セカンドキャリとしてネット起業の世界へ。 詳細は下記にて。 [clink url="https://studio-rough-style.net/self-introduction/"]

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