「好きなことを仕事にしたい」──多くの人が一度は抱く願いです。
けれど、現実には「趣味のままにしておいた方がいい」「好きを仕事にすると嫌いになる」といった声も聞こえてきます。
この問いについて、私は理想論を語る側でも、脅す側でもありません。
大学時代、周囲が就職活動に走る中、私はプロボクサーになる道を選びました。文字通り「好きなことを仕事にした」人間です。そしてその選択がくれたものと、突きつけてきた現実の両方を、この身体で知っています。
その経験を土台に、好きなことを仕事にするメリットとデメリット、理想と現実のギャップをどう超えるかを、現実的な視点でお伝えします。

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私は就職活動をせず、リングに上がった──好きを仕事にした人間の実感
大学時代、辰吉丈一郎さんの姿に衝撃を受けて、私はボクシングジムの門を叩きました。周囲が一斉にリクルートスーツに袖を通す時期に、私は「普通」に流されず、自分が一番挑戦したい道を選んだのです。
好きなことに人生を賭ける日々は、確かに輝いていました。朝のロードワークも、地獄の減量も、苦痛ではあっても「やらされている」感覚は一度もない。誰に強制されなくても練習は続くし、技術の探究は止まらない。「好き」が原動力になったとき、人間の継続力と吸収力は桁違いになる──これは、身をもって断言できます。
ただし、現実も同時に知りました。ボクシングだけでは、食べていけないのです。
私は生活費を稼ぐため、深夜の飲食店でアルバイトをしながらリングに上がり続けました。生活のためのアルバイトに時間と体力を奪われ、本当にやりたいことに全力を注ぎきれない──私はこれを「挑戦者のジレンマ」と呼んでいます。好きなことを仕事にする道の途中には、ほぼ確実にこのジレンマが待っています。
ちなみにその深夜の職場には、私以外にもプロボクサーがいて、総合格闘家、役者、お笑い芸人、映画監督志望、ミュージシャンもいました。全員が「好き」で生きようとして、全員が同じジレンマの中にいた。あの光景も含めて、この記事は書いています。
好きなことを仕事にするメリット
まず、メリットは主に4つに整理できます。
やりがいを感じやすい
自分が価値を感じているものに携わっているという感覚は、仕事の大きな原動力になります。「こなすべき作業」ではなく「やりたいこと」として向き合える分、長く続けやすいという側面があります。
楽しく仕事がしやすい
興味がある分野であれば、新しい情報を吸収することが苦になりません。誰かに強制されなくても、自ら進んで学ぶ姿勢が自然と生まれます。困難な局面でも、「好き」という根本の気持ちがあることで、前向きに乗り越える力が湧きやすいのです。
成長につながりやすい
好きなことに関しては、細部までこだわりたいという探究心が自然と働きます。努力を努力と思わずに、高いレベルへ到達できる可能性がある。この「努力を努力と感じない」状態は、心理学では「フロー」と呼ばれています。その脳科学的メカニズムは別の記事で掘り下げました。
スキルが定着しやすい
楽しみながら身につけたスキルは、定着率が高いと言われています。義務感で学んだ知識よりも、興味に駆られて得た知識の方が、長く記憶に残り、応用も利きやすいのです。
好きなことを仕事にするデメリット──「好き」と「食える」は別問題
メリットの裏側には、デメリットがあります。事前に覚悟しておくことで、後悔を減らせます。
収入が希望に合わない可能性
最大のデメリットはこれです。「好き」の強さと、その分野の収益性には、何の相関もありません。
私のボクシングがまさにそうでした。日本のプロボクサーで、ファイトマネーだけで生活できる選手はほんの一握りです。どれだけ情熱を注いでも、市場の構造がそうなっている以上、個人の努力では覆せない。
好きなことを優先するあまり収入を妥協し続けると、いくら好きでも生活の不安が先行し、納得がいかないまま消耗していくことになりかねません。
好きなことが嫌いになる可能性
仕事には必ず納期やノルマ、人間関係が伴います。純粋に楽しんでいた趣味が「やらなければならない業務」へと変化したとき、かつての情熱が失われ、その対象自体が嫌いになってしまうおそれがあります。「趣味は趣味のまま」という選択も、十分に合理的です。
オンオフの切り替えが難しくなる
好きな仕事だからこそ、没頭しやすくなります。仕事とプライベートの境目があいまいになり、休息が取れないまま精神的に疲れてしまうリスクがあります。
私自身、後年ネットビジネスに没頭しすぎて家庭を犠牲にした苦い経験があります。好きなことほど、時間の区切りを先に決めておくことが大切です。
「好きなことで起業」の落とし穴──お金になりにくい専門性がある
ここからは、この記事でいちばん伝えたいことです。多くの「好きを仕事に」論が触れない、収益性の問題です。
「自転車が好きだから自転車関連のビジネスがしたい」「料理が得意だから料理で起業したい」──その気持ちを、私は否定しません。好きなことをやれば楽しいし、長続きもします。ただ、それにこだわりすぎると、成功までの遠回りになることがあります。
なぜなら、世の中には「お金になりにくい専門性」というものがあるからです。
たとえば、小説を読むのが好きだから小説に関することで起業したい、と思ったとします。しかし個人が小説関連ビジネスで大きな金額を目指そうとした場合、選択肢はかなり限られています。お金も人脈もない状態で出版社を立ち上げても相手にされません。おすすめの小説を紹介するブログを運営したところで、Amazonアフィリエイトの書籍の報酬率は1~2%ほど。1,000円の小説が売れても、入ってくるのは10~20円です。
それなら、いまからコピーライティングやマーケティングを勉強して、ビジネスとして成立しやすい分野で収益の柱を立てるほうが、圧倒的に早く自由になれます。
「でも自分にはその専門性がない」と思うかもしれません。
大丈夫です。特技や専門性は、その気になれば後から作れます。
私自身、ネットビジネスを始めたときはビジネス知識ゼロで、タッチタイピングすらできませんでした。いま持っているものに固執する必要はないし、いま何もないからといって腐る必要もありません。
お金になりにくい専門性で戦うよりは、お金になりやすい専門性をいまから身につけるほうが、何倍も成功しやすい。もちろん、それなりの努力は必要ですが。
「稼ぐ軸」と「好きの軸」を分ける──私の現在の設計
では、収益性の低い「好き」は諦めるしかないのか。そうではありません。順序と役割を分ければいいのです。
私の現在の仕事は、こう設計されています。
収益の軸はGoogleリスティングアフィリエイト。仕組み化・自動化と相性が良く、安定してお金を生む「稼ぐ軸」です。
その一方で、キャンピングカー事業や清掃事業も手掛けていますが、正直に言えば、キャンピングカー事業は収益目的というより、車や旅が好きだという、ある意味「趣味」に近い部分があるし、清掃事業に関しては、利益率が高くて赤字になりようがないという部分と、単純に外に出て四季を感じたいという思いが強くてやっている形です。
稼ぐ軸が生活と時間の自由を支え、その自由の中で「好き」を思う存分やる。好きなことを直接収益化しようと苦しむのではなく、この三段構えにしたことで、お金の不安なく「好き」と付き合えるようになりました。
ボクシング時代に「挑戦者のジレンマ」で苦しんだ私がたどり着いた、ひとつの答えです。
そして、稼ぐ軸を作る過程でも「好き」は活きます。大切なのは、「このテーマなら、つい調べてしまう」「気がつけば考えている」という分野を選ぶこと。興味が持てるジャンルであれば続けやすく、結果として成果にもつながりやすいのです。
副業で試すという選択肢
いきなり本業を辞めて、好きなことに飛び込む必要はありません。
副業として、まず小さく試す──これが、リスクを抑えながら好きを仕事にする現実的な方法です。本業の収入があれば、失敗した場合も引き返せます。好きなことが本当に仕事に向いているか、自分が続けられるか──それを検証してから、本格的に舵を切る判断ができます。
副業に使える時間は限られていますが、1日15分から始めることは可能です。その小さな積み上げが、1年後には大きな差になります。
副業の選択肢として、私自身が現在進行形で取り組んでいるGoogleリスティングアフィリエイトについては、初心者にもわかりやすく解説した『Googleリスティングアフィリエイト大全』を無料公開していますので、興味のある方はご覧ください。
好きなことを仕事にするステップ
最後に、段階を踏んだアプローチを整理します。
ステップ①|「好き」を動詞で言語化する
まずは自分の中にある「好き」を深掘りします。有効なのが、「名詞ではなく動詞で考える」という視点です。
「ゲームが好き」を「戦略を立てるのが好き」に。「写真が好き」を「瞬間を切り取るのが好き」に言い換えてみる。動詞で考えることで、どのような仕事のスタイルが自分に合っているのか、本質が見えてきます。
私の場合も、突き詰めれば「ボクシングが好き」というより「自分の頭と身体で勝ち筋を探すことが好き」でした。だからこそ、その動詞はリングを降りたあと、広告運用という別の名詞でも成立したのです。
なお、「言語化する以前に、そもそも好きなことが思いつかない」「何がしたいのかすらわからない」という段階の方は、探すより先に小さく手を出すことが近道です。その具体的な手順は、こちらの記事にまとめています。
ステップ②|「好き」と「収益性」を両方の目で見る
自分の興味がある分野だけでなく、報酬率、市場規模、個人が参入できる余地等、その分野の収益構造まで調べてください。「好き」の熱量と「食える」構造は別物です。もし好きな分野の収益性が低いなら、前述の「稼ぐ軸を別に立てる設計」を検討する価値があります。
選択肢が多すぎて決められないときは、「何をやるか」ではなく「何をやらないか」を先に決める消去法が有効です。
ステップ③|優先順位を決めて、ラフに試す
収入、時間、働く場所──自分が譲れない条件に優先順位をつけましょう。完璧な条件を求めすぎると、動き出せなくなります。まずはラフに、仮説として試してみる。違ったら描き直せばいい。それがこのサイトで一貫してお伝えしている「ラフ案」の発想です。
まとめ|好きなことを仕事にするか、趣味のままにするか
好きなことを仕事にするメリットは、やりがい、楽しさ、成長、スキルの定着。デメリットは、収入の不安定さ、好きが嫌いになるリスク、オンオフの難しさです。
- 「好き」の熱量と、その分野の収益性は別物である。
- お金になりにくい専門性で戦うより、お金になる専門性を後から作るほうが早い。
- 「稼ぐ軸」と「好きの軸」を分ける二段構えという設計もある。
- いきなり本業にせず、副業で小さく試す。
- 「好き」は名詞ではなく動詞で言語化する。
好きなことを仕事にするか、趣味のままにしておくか──正解はひとつではありません。就職活動を放棄してリングに上がった私の選択も、万人に勧められるものではない。けれど、あの選択があったから、いまの私があります。
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