英語ができると年収は上がるのか|TOEICデータが示す29%差の正体

2026.05.09
未来の収入を変えていく一歩一歩のイメージ
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英語ができると、年収は本当に上がるのか。

データの答えを先に言うと、日経転職版の大卒年収調査(2022年版)では、TOEIC499点以下の平均年収が703.3万円、900点台は903.7万円。

差は200万円、比率で約29%です。

ただし、この数字を「英語を勉強すれば年収が29%上がる」と読んだ瞬間、あなたは英語ビジネスの上客になります。相関と因果は別物だからです。

私は元プロボクサーです。英語の専門家ではありませんし、まったくペラペラでもありません。

それでも、ネットでビジネスをするなかで海外の一次情報を読みに行く生活を続けてきて、英語というスキルの正体が、リングの上で嫌というほど体感したある要素と同じだと気づきました。

英語は、パンチ力ではない。リーチである。

リーチ(腕の長さ)は、それ自体では相手を倒せません。しかし同じ技術なら、リーチが長い選手のほうが先に当てられる。英語と年収の関係は、この一点を押さえると全部つながります。

【この記事の結論】

  • 英語力と年収には一貫した相関がある(TOEIC499点以下と900点台で約29%差)。ただし英語だけの因果効果ではない。
  • 英語は単体で稼げる「パンチ力」ではなく、専門性の届く範囲を広げる「リーチ」。掛け算されて初めて年収に変わる。
  • 大人が投資するなら、目的をひとつに絞り、スコアより「使う場」に先に立つこと。

この記事では、まずリングで学んだ「リーチ」の話から英語の正体を定義し、TOEIC・TOEFLと年収のデータを検証します。そのうえで、29%差の正しい読み方と、大人が英語学習に投資するときの順番までお伝えします。

リングで痛感した「リーチ」──英語の正体は、パンチ力ではなく届く距離

現役時代、リーチの長い相手と対戦するのは、本当に嫌なものでした。

こちらのパンチが届く距離に入るまでに、向こうのジャブは何発も届く。同じ技術、同じスピードなら、先に当てられる側が試合を組み立てられます

リーチとは攻撃力そのものではなく、「戦える距離」の差なのです。

ただし、ここが大事なところですが、リーチだけで勝った選手を、私は見たことがありません。腕が長くても、パンチの技術と当てる練習がなければ、ただ手が長いだけの人です。簡単に相手から懐に入られて、長い腕が逆に邪魔にさえなり得ます。

リーチは、技術に掛かって初めて武器になる

英語も、まったく同じ構造だと私は考えています。

英語それ自体は、商品でも専門性でもありません。しかし、同じ専門性を持つ2人がいたら、英語ができるほうが応募できる求人が多く、読める情報が早く、戦える市場が広い。

専門性がパンチ力で、英語がリーチ

この記事で見ていくデータの「29%差」は、リーチの差が長年積み重なった結果として読むのが、いちばん実態に近いはずです。

私自身、広告運用やネットビジネスの世界で、この差を何度も感じてきました。

この業界の一次情報は英語で出ます。日本語に翻訳され、解説記事になる頃には、数ヶ月から数年遅れている。英語が完璧でなくても、原文を読みに行く姿勢があるだけで、届く情報の距離が変わるのです。

データの答え合わせ──英語力と年収の「29%差」の中身

では、数字を見ていきます。

日経転職版が大卒以上の会員を対象にした年収調査(2022年版)では、TOEICスコア別の平均年収は次の通りでした。

【TOEICスコア別の平均年収(日経転職版・2022年版)】

  • 499点以下──703.3万円
  • 500〜599点──734.4万円
  • 600〜699点──750.8万円
  • 700〜799点──805.4万円
  • 800〜899点──855.1万円
  • 900〜990点──903.7万円

参考:日経転職版「大卒年収調査2022年版 TOEICスコア編」/https://career.nikkei.com/knowhow/income/002531/

499点以下と900点台の差は200.4万円。比率にすると約28.5%──この記事で「約29%」と呼んでいる差です。

しかも、この差は年齢とともに開きます。同調査の年代別集計では、20代の差が1.31倍なのに対し、50代では360万円差・1.39倍。翌2023年版の調査では、900点以上と499点以下の差は278万円まで広がっています。

転職サービスdodaグローバルの集計でも、傾向は同じです。

600点台までは平均年収に大きな差が出ない一方、700点台から上でスコアと年収の相関が明確になり、800点以上はスコアなしの人と比べて100万円以上の差がついています。

参考:dodaグローバル「TOEICスコアが高いほど年収は高い!スコア別平均年収と転職成功アドバイス」/https://doda.jp/global/guide/004.html

外資系に強い人材会社エンワールド・ジャパンの調査(2020年・1,928名)では、英語レベル「上級(流暢)」の人の約60%が年収1,000万円以上。「初級(挨拶レベル)」では約10%でした。給与所得者全体で年収1,000万円超が約5%であることを考えると、突出した数字です。

参考:エンワールド・ジャパン「英語レベル『上級』では、年収1,000万円以上が約60%」/https://www.enworld.com/newsrelease/english_level_salary.html

複数の独立した調査で、同じ向きの結果が出ている。「英語力が高い人ほど年収も高い」という相関そのものは、疑う余地があまりありません

問題は、この数字の読み方です。

「29%差」を英語のおかげと読んではいけない──相関と因果の罠

ここが、この記事でいちばん大事な段落です。

英語力と年収には相関がある。しかし、英語だけが年収を29%押し上げているわけではない。

気づいた方もいるかもしれませんが、先ほどのデータには不思議な点があります。日経転職版ではTOEIC900点台の平均が903.7万円なのに、dodaの集計では900点の平均が534万円。

同じ「TOEIC900点」なのに、370万円もズレているのです。

答えは、母集団の違いです。日経転職版は大卒以上の会員、dodaは20〜65歳の幅広い登録者で、調査時期も異なります。

つまり、年収を決めているのはスコアだけではなく、学歴・職種・業界・経験といった「その人がどこに立っているか」だという証拠が、データ自身の中に埋まっているわけです。

【英語力と年収の相関に混ざっている要因】

  • 職種・業界──コンサル、金融、商社、外資系など、高年収の職場ほど英語需要が多い。
  • 学歴・学習習慣──高スコアを取れる人は、学習の継続力にも恵まれていることが多い。
  • 海外経験──留学・駐在の経験が、英語力と年収の両方を押し上げる。
  • 専門性──英語の他に、技術・営業・マネジメントなどの武器を持っている。

「英語ができるから高年収」なのか、「高年収になりやすい場所にいる人が英語もできる」のか。おそらく両方です。

ボクシングで言えば、リーチの長い選手が勝ちやすいのは事実でも、勝因を分解すればリーチ以外の要素がいくつも絡んでいる──それと同じことです。

この「相関と因果を混同しない」という読み方は、読書量と年収の関係でもそっくり同じ構図が出てきます。データの読み方そのものに興味がある方は、別の記事で詳しく整理しています。

英語が年収に効く3つの方向──リーチはどこへ伸びるのか

因果ではないなら、英語は無意味なのか。そうではありません。

リーチが伸びる方向を分解すると、英語が年収に「効きうる」経路は3つあります。

① 応募できる市場が広がる

英語が使えると、立てるリングの数が増えます。外資系、海外営業、グローバルマーケティング、貿易、国際法務──英語を条件にする求人には、日本語だけの市場とは異なる給与水準が存在します。

労働市場の原理はシンプルで、需要があって供給が少ないスキルほど単価が上がる

「専門性×英語」を満たす人材は、どの業界でもまだ足りていません。

② 情報の到達速度が変わる

テクノロジー、マーケティング、AI、投資、研究。

多くの一次情報は英語で出ます。翻訳と解説を待つ人と、原文を読みに行く人とでは、同じ情報にたどり着く時刻が数ヶ月単位でズレる。

私はこれを、英語の価値のなかで最も過小評価されている部分だと思っています。

話せなくてもいい。読めるだけで、世界の知識データベースに直接アクセスできる。仕事の判断が変わり、判断の質は、長期的には収入に跳ね返ります。

③ 専門性の単価が上がる

そして最大の経路が、掛け算です。IT×英語、営業×英語、法務×英語、研究×英語。

すでに持っている専門性に英語が乗ると、その専門性で戦える市場が日本語圏から英語圏へ広がります

順序に注意してください。

英語が先ではなく、専門性が先です。パンチ力のない選手のリーチが脅威にならないのと同じで、掛けられる中身がなければ、リーチだけ伸ばしても市場価値は変わりません。

AI翻訳時代に「英語だけ」では稼げない理由

「翻訳AIがあるから、もう英語は要らないのでは?」という疑問にも触れておきます。

半分正しくて、半分違う、というのが私の実感です。

正しい半分──単純な読解、定型メール、逐語翻訳の価値は、確実に下がっています。「英語ができる」だけを商品にする働き方は、機械との価格競争に入りました。

違う半分──英語で何を判断し、誰と交渉し、どんな成果を出すか、という部分は下がっていません。むしろ、翻訳ツールで誰でも「読める」ようになったからこそ、英語圏の情報を自分の専門性で解釈し、成果に変換できる人との差が開いています。道具が普及するほど、道具の先にある実力の差が露呈する。これはAIに限らず、どの世界でも起きてきたことです。

だから、英語学習を年収につなげたいなら、「英語を勉強する」だけでは足りません。英語を使うポジションへ、自分を配置し直すところまでがワンセットです。

能力そのものより、能力が評価される場所に立てるかどうか──この「立ち位置」の考え方は、学歴の記事で詳しく書いています。

TOEICとTOEFL、どちらに投資するか──目的で選ぶ

指標の使い分けも、目的から逆算すれば迷いません。

TOEICは、国内ビジネス市場での「英語力の見える化」に強い指標です。企業側が見慣れているため、履歴書に書けば書類選考のシグナルとして機能します。

データ上の節目は700点。600点台までは年収差が小さく、700点台から相関がはっきり出るのは、先ほどのdodaの集計が示す通りです。

ただしTOEIC L&Rが測るのは聞く・読む力であり、会議で発言し交渉する運用力は別途問われます。スコアは「読みやすい名刺」であって、実力の証明書ではありません。

TOEFLは、方向がまったく違います。海外大学・大学院の授業についていけるかを測るアカデミックな試験で、世界160カ国以上・13,000以上の機関で認められています。

国内転職の年収データに直結する場面は少ない代わりに、海外進学、MBA、研究職、国際機関といった「年収の高くなりやすいキャリアへの通行証」になり得ます。

参考:ETS「TOEFL English Language Test」/https://www.ets.org/toefl/

短期の国内転職・昇進ならTOEIC、海外で学び働く長期設計ならTOEFL。

どちらが上という話ではなく、リーチを伸ばしたい方向が国内市場か海外市場か、の違いです。

大人の英語投資は「一動作」から──始め方の設計

最後に、大人がこれから英語に時間とお金を投じるなら、という実務の話です。

英語学習が挫折しやすい最大の理由は、範囲の広さです。単語、文法、リスニング、スピーキング、TOEIC、英会話──全部を一気に取りに行くと、たいてい止まります。

私がボクシングでも広告運用でも守ってきた鉄則は、スキルの塊を丸ごと練習せず、一動作に分解して反復すること。

英語なら「TOEICのPart 5だけ」「仕事の英文メールの型だけ」「海外記事を読む語彙だけ」のように、最初の20時間をひとつの動作に集中させます。

この学習設計の考え方は、20時間の法則の記事で詳しく整理しています。

もうひとつ。

教材を完璧に終えてから使おうとしないことです。

実力は、準備が整ってから身につくものではなく、使わざるを得ない場に先に立つことで身につきます

私は起業でも広告運用でも、「学びきってから挑戦」ではなく「挑戦しながら学ぶ」ほうが圧倒的に速いことを体感してきました。英語も同じで、海外の記事を今日から読み始める、英語でアウトプットする場を先に作る──下手なまま使い始めた人から伸びていきます。

そして、投資の回収を「年収」だけで測らないことも、続けるための現実的なコツです。

英語で得られる情報、つながれる人、離れて見られる日本語圏の常識。こうしたリターンは数字に出るまで時間がかかりますが、知識や経験という無形資産は誰にも奪えません。

お金を無形資産に変える自己投資の考え方は、別の記事で書いています。

まとめ──英語は年収より先に、届く距離を変える

この記事の要点を整理します。

【この記事のまとめ】

  • TOEIC499点以下と900点台の平均年収差は約29%。複数の調査で相関は一貫している。
  • ただし相関は因果ではない。同じ900点でも母集団が違えば平均年収は370万円ズレる──年収を決めるのは「どこに立つか」を含む複合要因。
  • 英語はパンチ力ではなくリーチ。単体では稼げないが、専門性に掛かると市場・情報・単価の3方向へ届く距離が伸びる。
  • 大人の投資は、目的をひとつに絞った20時間から。スコアを磨くより先に、英語を使う場に立つ。

リーチは、生まれつきの腕の長さで決まります。しかし英語というリーチは、大人になってからでも伸ばせる。ここが、リングより人生のほうが少しだけ公平なところです。

私は、常識や他人の基準ではなく、自分の届く範囲を自分で設計し直すことで生き方を変えてきました。その過程は、著書(Amazon kindle ランキング 5冠を達成した電子書籍)『あ、常識とかいいんで、とりあえず自由ください。』に綴っています。英語もキャリアも、誰かの正解に合わせるためではなく、自分の世界を広げるための道具です。下記より無料でお読みいただけます。

「英語をやるべきか」とまだ迷っているなら、判断材料をひとつ。

今日、あなたの専門分野の英語記事を1本、翻訳ツールを使いながらでいいので読んでみてください。そこに日本語圏でまだ語られていない情報が1つでもあったなら──あなたのリーチは、伸ばす価値があります。

リライフ特集

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Studio Rough Style(SRS)代表。 当サイト管理人&編集長。 1976年生まれ、熊本県出身、東京都在住。 元プロボクサーで、選手引退後に、派遣・アルバイトなど30社以上の現場を渡り歩くフリーター生活を経験後、セカンドキャリとしてネット起業の世界へ。 詳細は下記にて。 [clink url="https://studio-rough-style.net/self-introduction/"]

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