Stay Hungry, Stay Foolishの本当の意味──ホールアース・カタログの裏表紙と、ジョブズが直前に語った言葉から読み解く

2026.05.03
地平線まで続く誰もいない道にたたずむヒッチハイカー
ページに広告が含まれる場合があります

Stay Hungry, Stay Foolish.(ハングリーであれ。愚か者であれ。)

スティーブ・ジョブズが2005年のスタンフォード大学卒業式スピーチの最後で残したこの言葉は、いまや世界中で最も引用される名言のひとつになっています。

ところが、巷の解説のほとんどが、この言葉を 「ハングリー精神を持って、貪欲に努力し続けろ」「賢く立ち回らず、バカになるくらい突き抜けろ」といった、いわゆるガツガツ系の成功訓示として読み解いています。「現状に満足せず、上を目指して走り続けろ」──この解釈は、本当に正しいのでしょうか。

結論を先に言ってしまうと、この言葉は そもそもジョブズの創作ではありません。原典は1974年に廃刊となった伝説のカウンターカルチャー雑誌『Whole Earth Catalog(ホール・アース・カタログ)』最終号の 裏表紙に印字されていた、別れのメッセージです。さらにそこには 「早朝の田舎道」の写真が添えられ、編集長スチュアート・ブランド本人が、

この言葉は、夜明けに旅をする若いヒッチハイカーの心境を表したもの

そう明確に語っています。

そしてジョブズ自身が、卒業式スピーチで この一文の直前に語っていた言葉を読み逃すと、意味は完全に反転します。彼は「Stay Hungry, Stay Foolish」を口にする前に、卒業生たちに対してこう言っていたのです。

他人の意見という雑音で、自分の内なる声をかき消してはいけない。自分の心と直感に従う勇気を持ちなさい。

この記事では、「Stay Hungry, Stay Foolish」の出どころを正確に押さえたうえで、原典と直前文脈から本来の意味を再構築し、この言葉が「成功・出世のためのガツガツ訓示」ではなく、自分の人生をデザインして歩き続ける『静かな旅人』への激励だったことを示します。さらに最後には、この言葉を明日からの自分の生き方にどう落とし込むかまでを整理します。

ちなみに、「世間が用意したテンプレに自分の人生を合わせず、内なる声と直感に従う」というジョブズの姿勢は、思考法のレイヤーで言えばイーロン・マスクの「第一原理思考」と同型です。マスクが業界常識のバッテリーコスト$600/kWhを「材料費$80+慣習由来$520」に分解して書き換えたように、ジョブズは「人生のテンプレ」を「物理法則として動かない真理」と「ただの社会的慣習」に分解し、後者を躊躇なく書き換えた人物でした。マスクは物理を、ジョブズは人生を、それぞれ第一原理から再構築した。──第一原理思考の手順と、人生設計への応用までを、別の記事で実装ガイドとして整理しています。「Stay Hungry, Stay Foolish」を「自分の人生を分解し直すための思考インフラ」として受け取る、もう一段深い読み方の補助線になるはずです。

目次

「ハングリー精神を持て」という解釈は、本当に正しいか

まず、巷でこの言葉がどう解釈されているかを確認しておきます。日本語圏のブログ・SNS・自己啓発本の多くで、この一文はおおむね次のように説明されています。

【「Stay Hungry, Stay Foolish」のよくある解釈】

  • Hungry=「ハングリー精神を持て」(成功への飢え/競争心/満足するな)
  • Foolish=「バカになって突き抜けろ」(常識を捨てろ/非常識に振る舞え/人にどう思われても気にするな)
  • 全体の含意:「現状に満足せず、貪欲に成功を追え」「賢く立ち回らず、突き抜けるくらい馬鹿になれ」

──確かに、英語の表面的な訳としては間違いではありません。しかし、この解釈には決定的に 「言葉が生まれた文脈」と「ジョブズが引用した文脈」が抜け落ちています。

ジョブズが2005年のスピーチで述べた言葉どおりに引用するなら、彼は

これは 『Whole Earth Catalog(ホール・アース・カタログ)』の最終号の裏表紙に書かれていた、彼らの別れの言葉です。

と紹介していました。つまり、彼自身がオリジナルの作者だと主張したことは一度もありません。それどころか、彼は 原典の出どころを丁寧に紹介したうえで

私はいつも、自分自身もこうありたいと願ってきた。そして卒業生のあなたたちにも、こうあってほしい。

と添えて、この言葉を贈ったのです。

ということは──ジョブズの言葉の本当の意味を知ろうとすれば、まず原典まで遡るしかないということになります。次の章から、その出どころを見ていきましょう。

そもそも誰の言葉なのか──ジョブズのオリジナルではない

「Stay Hungry, Stay Foolish」を世に出した人物の名は、スチュアート・ブランド(Stewart Brand)といいます。生物学者・写真家・編集者・テクノロジー思想家として知られる、アメリカのカウンターカルチャーを代表する人物のひとりです。

『Whole Earth Catalog』──「Googleのペーパーバック版」

ブランドが1968年に創刊した『Whole Earth Catalog(ホール・アース・カタログ)』は、ヒッピー文化・自給自足・DIY・エコロジー・テクノロジーを横断的に扱った、当時としては画期的なカタログ雑誌でした。「Access to Tools(道具へのアクセス)」をスローガンに掲げ、自分の人生を自分で設計しようとする若者たちのバイブルとして、世界的に大きな影響を与えた媒体です。

ジョブズ自身が2005年のスピーチで、この雑誌のことをこう紹介しています。

「ホール・アース・カタログは、私が10代の頃のバイブルのひとつでした。Googleが登場するずっと前の、いわば ペーパーバック版のGoogleのような存在です。理想主義に満ち、優れたツールと壮大なアイデアであふれていました。」

参考:Wikipedia「Whole Earth Catalog」/https://en.wikipedia.org/wiki/Whole_Earth_Catalog

つまりこの雑誌は、単なるカタログ誌ではなく、「既存の制度や常識から離れて、自分の手で人生をデザインしようとする人たちのための知的インフラ」でした。「Stay Hungry, Stay Foolish」が生まれたのは、そういう精神を共有する読者コミュニティに向けた最終号の 別れの言葉として、なのです。

1974年『Whole Earth Epilog』──別れのメッセージ

『Whole Earth Catalog』は1974年10月、最終号『Whole Earth Epilog(ホール・アース・エピローグ)』をもって幕を閉じます。雑誌の最終ページ──正確には 裏表紙(back cover)に、当時の読者たちへの別れのメッセージが印字されました。それが「Stay hungry. Stay foolish.」だったのです。

参考:Steve Jobs Archive「Stay Hungry, Stay Foolish」/https://stevejobsarchive.com/exhibits/stay-hungry-stay-foolish

ジョブズはスピーチでこのことを正確に伝えていました。

これは、彼らが自分たちの活動を終えるときに残した、別れのメッセージでした。

重要なのは、これが「成功者から後進への檄文」ではなく、「自分たちの旅を終えた人たちが、これから旅を続ける若者たちに贈った、はなむけの言葉」だったということです。

裏表紙の写真は「早朝の田舎道」だった

ここからが、巷の解釈で完全に抜け落ちている重要な事実です。「Stay hungry. Stay foolish.」という一文は、ただ文字だけが印字されていたわけではないのです。

夜明けの田舎道とヒッチハイカー

『Whole Earth Epilog』の裏表紙には、早朝の田舎道の写真が大きく掲載されていました。地平線まで続く、誰もいない道。夜が明けたばかりの薄明かりの空。そして、その下に小さく「Stay hungry. Stay foolish.」と印字されていたのです。

編集長のスチュアート・ブランドは、後年このカバー写真の意図についてこう説明しています。

「私は、地球を宇宙から撮影した衛星写真と、地上で夜明けを迎える人間の姿を結びつけたかった。そのときに思い描いたのが、夜明けの田舎道に立つ若いヒッチハイカーのイメージだった。」

参考:Ailian Gan「The origins of stay hungry, stay foolish」/https://medium.com/ailiangan/the-origins-of-stay-hungry-stay-foolish-5a4a8d626f2

「若いヒッチハイカーの心境」とは何か──Brandが語った本当の意味

そしてブランドは、この若いヒッチハイカーの心の状態について、言葉そのものの意味を直接説明する形でこう語っています。

若いヒッチハイカーの心の状態は、人間が持ちうる最も自由な心の状態のひとつだ。彼はいつも少しだけお腹を空かせていて、そして、自分が完全にバカげたことをしていると、自分でちゃんとわかっている。」

ここに、この言葉の 本当の意味が凝縮されています。

【Brandが語った「Stay Hungry, Stay Foolish」の意味】

  • Hungry:家を持たず、保証もなく、明日どこにいるかもわからない若い旅人の 「常に少しだけ満たされていない状態」。それは、欠乏や貧しさではなく、「次の景色を見たい」「まだ見ぬものに会いに行きたい」という生きた渇き
  • Foolish:真っ当な大人から見れば、家を出て一人で道に立ち、見知らぬ車に乗ろうとする行為は 明らかに『愚か(foolish)』。それでも本人は、自分が「そう見える」ことを知ったうえで、自分の直感を信じて道に立ち続けている。
  • 全体の含意:常識から見た「愚かさ」と、満ち足りない「渇き」を、自分の自由として引き受けて旅を続ける若い人間の心の状態

──お気づきでしょうか。これは「貪欲に成功を追え」とも「ガツガツ努力しろ」とも、まったく違う意味です。むしろ、安定や常識から自ら離れて、自分の道を歩こうとする静かな旅人への、優しい肯定の言葉なのです。

ジョブズはこの裏表紙にあまりに感動したため、後年スチュアート・ブランド本人に

裏表紙のサイン入りコピーを送ってほしい

と依頼までしていることが知られています。彼が引用したかったのは、まさにこの 「夜明けの田舎道に立つ若い旅人の心の状態」そのものだったわけです。

ジョブズが直前に語った言葉を読み逃すと、意味は反転する

もう一つ、決定的に重要なのが 「ジョブズがこの引用文の直前に何を語っていたか」です。スピーチの全体を読まず、最後の一行だけを切り取って引用したことが、巷の誤解の最大の原因と言ってもいいかもしれません。

「他人の意見という雑音で、自分の内なる声をかき消してはいけない」

ジョブズはスピーチの「3つ目の話(死について)」を語ったあと、結論として卒業生たちにこう呼びかけていました。

「あなたたちの時間は限られています。だから、他人の人生を生きて時間を無駄にしてはいけない。ドグマ(教条)に縛られてはいけない。それは他人の思考の結果に従って生きることだ。他人の意見という雑音で、自分の内なる声をかき消してはいけない。そして何より大切なのは、自分の心と直感に従う勇気を持つことです。あなたの心と直感は、あなたが本当は何になりたいかを、すでに知っています。それ以外のすべては、二次的なものです。」

この長い呼びかけのあとに、ジョブズは 「Stay Hungry, Stay Foolish」を続けたのです。

直前文脈と接続すると意味は明らかに変わる

つまり、「Stay Hungry, Stay Foolish」は、ジョブズの語り口においては「他人の意見ではなく自分の心と直感に従い続けよ」という直前のメッセージを 受けたうえでの結語として置かれていました。

この文脈を踏まえると、「Hungry」と「Foolish」が指しているのは 「他人の評価や常識を気にせず、自分の内なる声に従って歩き続ける人の姿勢」であって、「ハングリー精神を持って競争に勝て」「バカになって突き抜けろ」という外向きの成功論ではない──ということが、論理的に明確に見えてきます。

ジョブズが本当に語っていたのは、ホール・アース・カタログの裏表紙の若いヒッチハイカーと、まったく同じ心の状態だったのです。満たされない渇きを抱えたまま、世間の目から見た「愚かさ」を引き受けて、自分の心と直感が指し示す道を歩き続ける──その姿勢を、自分自身も大切にしてきたし、卒業生たちにもそうあってほしい、と。

「Hungry」と「Foolish」──成功の言葉ではなく、自由の言葉

ここまでの整理を踏まえて、改めて2つの単語の本当の意味を再定義してみます。

Hungry=「現状の常識に満たされない、健全な渇き」

「Hungry」は、よく訳されるような 「貪欲に成功を求めろ」「年収・地位・名誉に飢えろ」という外向きの渇望ではありません。

原典の文脈で言えば、それは 「いまの自分の景色に、まだ見たい未踏の地が残っている」という、内側からの健全な渇きです。次の景色を見たい、もう少し先まで歩いてみたい、まだ会ったことのない人に会ってみたい──そういう、誰かに与えられた目標ではなく、自分の心が静かに求めているものに正直であろうとする態度。

言い換えれば、Hungryとは 「他人の物差しで満足したフリをせず、自分の心の物差しで『まだ満たされていない』と言い続ける勇気」のことです。社会的に「成功した」とされる場所に着いてもなお、自分の内側の声に耳を傾け続けられるかどうか──ジョブズが伝えたかったのは、その種の渇きでしょう。

Foolish=「賢く見られることより、自分の直感を選ぶ覚悟」

同じく「Foolish」も、「常識を破壊しろ」「非常識に振る舞え」という挑発的な意味ではありません

原典の若いヒッチハイカーは、決して「常識を壊そう」と意気込んで道に立っていたわけではありません。彼はただ、真っ当な大人から見れば「愚かに見える」道を、自分の直感に従って歩いていただけです。彼自身も、それが世間からどう見えているかちゃんとわかっている。それでも、自分の中の小さな声を信じて、その道を歩いている。

つまりFoolishとは、「賢く立ち回って世間に評価されること」よりも、「世間からは少し愚かに見えるけれど、自分の心と直感が指し示す方向を選ぶこと」を引き受ける覚悟のことです。これは、ジョブズが直前に語っていた 「他人の意見という雑音で、自分の内なる声をかき消すな」と、完全に同じ方向を指しています。

この言葉は「成功者の檄文」ではなく「旅人への激励」

こうして見ていくと、「Stay Hungry, Stay Foolish」は、私たちが思い込まされてきたような 「ガツガツ系の成功訓示」とは正反対のベクトルを向いていることがわかります。

これは 競争に勝つための言葉ではなく、競争の文脈そのものから降りるための言葉です。他人の物差しで「もっと上」を目指せという話ではなく、自分の物差しで「もう少し先」を見続けよという話。賢く立ち回って評価されろではなく、愚かに見られても直感に従うほうを選べという話。

結局のところ、ジョブズが卒業生に贈ったこの一文は、「成功の言葉」ではなく「自由の言葉」でした。──そう読むことで初めて、ジョブズが直前に語った「自分の心と直感に従う勇気」と、ホール・アース・カタログの裏表紙の若いヒッチハイカーと、ジョブズ自身の生き様が、ようやく一直線につながります。

そもそも「成功」とは何なのか──年収・地位・肩書といった 社会的成功と、自律性・没頭・関係性といった 個人的成功がどう構造的に違い、なぜ前者をいくら積み上げても内側が満たされないのか。心理学者デシ&ライアンの自己決定理論やカーネマン研究を補助線に、別の記事で整理しています。「Stay Hungry, Stay Foolish」を 「自由の言葉」として受け取るための、もう一段深い土台になるはずです。

私の解釈──プレイヤーとして生きるための「Stay Hungry, Stay Foolish」

私は2020年代前半、自分のコンテンツや個人ビジネスのコンサルティングを通じて、人を「指導する側(リーダー)」として活動していたことがあります。当時の自分には、それなりの肩書きと、それなりの売上と、それなりに「賢く立ち回れている」感覚がありました。世間から見れば、「成功している側」に分類される位置だったと思います。

しかし、ある時期から、自分の内側の声がはっきりと 「ここではない」と告げるようになりました。誰かを指導する立場であり続けることが、自分の本当に望む生き方なのかどうか──冷静に問うてみると、答えは「ノー」だった。それで私は、指導者という位置から静かに降り、もう一度ただのプレイヤー(実務家)として、自分の手でアフィリエイトの作業を回す側に戻るという、世間から見れば「逆走」のような選択をしました。

当時、周囲からは 「もったいない」「なぜわざわざ降りるのか」と何度も言われました。実際、社会通念から言えば、それはまさに「Foolish(愚か)」な選択だったでしょう。しかし、私の内側の声は、間違いなく「こちらが本当の道だ」と告げていました。

振り返ってみれば、あの選択をしたとき、私は本当の意味で 「Stay Hungry, Stay Foolish」を実践していたのだと思います。

【私が体感した「Stay Hungry, Stay Foolish」の意味】

  • Hungry=「指導者ポジションでの停滞」より、「もう一度自分の手で道具を握って何かを作り続けたい」という、内側からの静かな渇き。
  • Foolish=世間から見れば 「ステージを下げる愚かな選択」に映ると分かったうえで、それでも自分の直感のほうを選ぶこと。

現在の私は、Googleリスティングアフィリエイトという、地味で地に足のついた実務作業を中核に、「指導者」ではなく「ひとりのプレイヤー」として日々を過ごしています。年商を派手に伸ばすことより、「精神的・時間的・場所的な自由を保ったまま、自分の好奇心と直感に正直に作業を回し続けられているか」を、自分の中の唯一の物差しにしています。

「Stay Hungry, Stay Foolish」は、私にとって 「もっと稼げ、もっと上を目指せ」と背中を押す言葉ではない。むしろ、「世間の物差しで満足したフリをして、ここで止まるな」「世間から見てFoolishに映る選択でも、自分の心がYesと言うほうを選び続けろ」と、静かに横から背中をなでる言葉になっています。

──そして、これは私だけの解釈ではなく、ジョブズが直前に語った「自分の心と直感に従う勇気」と、ホール・アース・カタログの裏表紙の若いヒッチハイカーが、もともと指していた方向そのものでもあるのです。

──ちなみに、この「世間からはFoolishに見える選択」を実際に選び取って、なお人生を 輝かせるためには、いくつかの条件と現実的な段取りがあります。プロスペクト理論や現状維持バイアスを補助線に、「レールから外れた人生がいつ輝くのか/外れただけでは輝かないのはなぜか/いきなり飛び降りない段階的脱線の3ステップ」を、別の記事で実装ガイドとしてまとめました。Stay Hungry, Stay Foolishを精神論で終わらせず、自分の現実に落とし込みたい方の補助線になるはずです。

明日からどう体現するか──3つの実装

「Stay Hungry, Stay Foolish」を、明日からの自分の生き方にどう落とし込むか──。原典と直前文脈に忠実に読み解くと、それは「もっと頑張れ」ではなく、「自分の内側との対話を取り戻す」3つの実装に整理できます。

①|「他人の物差し」と「自分の物差し」を分けて書き出す

最初の一歩は、「いま自分が満足している/満足していない」と感じている対象が、そもそも誰の物差しによるものかを分けてみることです。

年収、肩書、フォロワー数、所属、世間体、家族の期待──こうしたものは多くの場合、他人の物差しです。一方で、心の余白、関係性の質、毎日の機嫌、好奇心が動く瞬間、自分が手を動かすときの没頭感──こちらは、自分の物差しです。

紙に2列の表を書いて、いま自分が「気にしていること」「焦っていること」「不安に思っていること」を全部書き出し、それぞれが 「他人の物差し」か「自分の物差し」かを仕分けてみてください。多くの人は、自分が苦しんでいるものの大半が「他人の物差し」だったことに気づきます。Hungryでいるべき対象を、自分の物差しの側にだけ絞る──これが第一歩です。

「自分の物差し」をもっと言語化したい場合は、別の記事で「成功の自分基準」を5つの問いで設計するワークをまとめています。

②|「世間からはFoolishに見える小さな選択」を、月にひとつ実行する

2つ目は、「世間から見れば少し愚かに見えるけれど、自分の心と直感がYesと言っている小さな選択」を、月に最低ひとつ実行することです。

【「小さなFoolish」の例】

  • 収入は確実に減るとわかっているけれど、好きでもない案件を受けるのをやめてみる。
  • キャリアに直接関係ない、純粋に「楽しそう」という理由だけで本を読む。
  • みんなが取得を勧めてくる資格を、あえて取らないと決める。
  • 「役に立つかどうか」を一切考えず、ただ気が向いた場所に旅に出る。
  • SNSのフォロワー数を増やす施策を、半年だけ完全にやめてみる。

大事なのは、いきなり 「会社を辞める」「全財産を投げて起業する」のような、大きすぎるFoolishを目指さないことです。本当の意味でのFoolishは、派手なジャンプではなく、誰にも気づかれない小さな選択のなかにこそ宿ります。月にひとつ、誰の評価も気にせず「自分が心から選んだ選択」を積み重ねていけば、半年後・1年後の自分の生き方の輪郭は、確実に変わっていきます。

③|「他人の意見の雑音」を意識的に下げる時間を確保する

3つ目は、ジョブズの直前文脈である 「他人の意見という雑音で、自分の内なる声をかき消してはいけない」を、文字通り環境設計に落とし込むことです。

SNSのタイムライン、ニュースアプリ、メッセージの通知、職場の雑談──現代の私たちは、起きている時間のほとんどを 「他人の意見の雑音」に晒されています。この状態では、自分の心と直感がいくら何かを語ろうとしても、その声は外側のノイズに完全にかき消されてしまいます。

具体的には、1日のなかに「他人の意見の雑音をゼロにする時間」を最低30分確保すること。スマホを別室に置いた散歩、SNSもニュースも開かないコーヒー時間、誰にも返信しないと決めた早朝の作業時間──そうした「自分の内側の声しか聞こえない時間」を、毎日同じ時間帯に固定で確保します。

こうした「ひとりの時間」が、なぜ判断力や創造性に直結するのかという科学的な背景は、別の記事で詳しく整理しています。

──ちなみに、ここまで読んでくださった方の中には、こう感じる方もいるかもしれません。「自分の心と直感に従って生きるなんて、聞こえはいいけれど、現実にはそんなに甘くないだろう」と。

その感覚は、ある意味で正しいです。多数派の常識に従って生きるほうが、短期的にはずっと「楽」なのも事実です。けれど、私自身、何度も常識のレールから降りる選択を繰り返してきた経験から言えば、本当の苦しさは「自分の人生を生きていない」と心の奥底で気づきながら、それでも常識に従い続けることのほうにあります。常識を疑い、自分の価値観で人生を再設計する──このテーマは、私が著書(Amazon kindle ランキング 5冠を達成した電子書籍)『あ、常識とかいいんで、とりあえず自由ください。』のなかで、自分自身のリアルな体験と共に書いたものでもあります。下記より無料でお読みいただけます。

まとめ──「Stay Hungry, Stay Foolish」は、自由の旅人への手紙だった

本記事の内容を整理します。

【この記事のまとめ】

  • 「Stay Hungry, Stay Foolish」は ジョブズのオリジナルではなく、Stewart Brand編集『Whole Earth Catalog』1974年最終号の裏表紙に印字された別れのメッセージ。
  • 裏表紙には 「早朝の田舎道」の写真が添えられ、Brandは「夜明けに旅をする若いヒッチハイカーの心境」を描きたかったと明言している。
  • Brand本人による解説は 「常に少しだけ満たされず、世間からは愚かに見えると分かりながら自分の道を歩く、最も自由な心の状態」
  • ジョブズはスピーチで、この一文の 直前に「他人の意見という雑音で自分の内なる声をかき消すな。自分の心と直感に従う勇気を持て」と語っていた。
  • つまりこの言葉は 「ハングリー精神で成功を追え/バカになって突き抜けろ」という外向きの成功訓示ではない
  • 本当の意味は、「他人の物差しで満足せず、世間からFoolishに映る選択でも、自分の心と直感が指す方向に歩き続けよ」という、自由な旅人への激励
  • 体現するための3つの実装は、① 他人の物差しと自分の物差しを仕分ける ② 月にひとつ「小さなFoolish」を選ぶ ③ 他人の意見の雑音をゼロにする時間を毎日30分。

「Stay Hungry, Stay Foolish」は、もともと 「成功者から後進への檄文」ではなく、自由を求めて旅を続ける若い人たちへの、静かな別れの手紙でした。ジョブズはその精神に深く感動し、自分の生き方の指針として大切にし、最後に卒業生たちに同じ言葉を贈った──ただそれだけのことだったのです。

もしこの言葉に背中を押されたいと感じているのなら、思い出してほしいことがひとつだけあります。あなたが向かうべきは、誰かの物差しの「上」ではなく、あなた自身の心と直感が静かに指し示す「先」だということ。世間からはFoolishに見える選択でも、自分の内なる声がYesと言っているのなら、それはあなたにとって正しい道です。

明日からの第一歩は、たったひとつでいい。今日一日のうちに5分だけ、スマホを置いて、自分の心が本当に何を求めているかに耳を澄ませてみる──Stay Hungry, Stay Foolishの旅は、その小さな静寂のなかから始まります。

リライフ特集

この記事は役に立ちましたか?
もし参考になりましたら、下のボタンで教えてください。

Studio Rough Style(SRS)代表。 当サイト管理人&編集長。 1976年生まれ、熊本県出身、東京都在住。 元プロボクサーで、選手引退後に、派遣・アルバイトなど30社以上の現場を渡り歩くフリーター生活を経験後、セカンドキャリとしてネット起業の世界へ。 詳細は下記にて。 [clink url="https://studio-rough-style.net/self-introduction/"]

コメント

この記事へのコメントはありません。

コメントを残す

関連記事

目次